元総理のゾンビたちが自民党をつぶす

週間朝日7/17号に上杉隆氏が解散どころか人事もできない「麻生死に体政権」動かすゾンビたちというタイトルで掲載されている。その内容をかいつまんで紹介してみよう。

リーダーにとってもっとも必要な資質が決断力と判断力だ。その両方が全くゼロに等しい麻生太郎首相には、さらに困ったことがある。それは、聞いてはいけないアドバイスを受け入れてしまうことである。首相がカラッポなのをいいことに、退陣した元首相たちがゾンビのごとくうごめいている。
その中でも森善朗元首相は政局の節目節目に登場してはキングメーカーを気取る。森は自民党が立党以来の危機に直面した2000年夏の時の総裁である。このときには「加藤の乱」がおき、その後、実習船「えみめ丸」のハワイ沖の沈没事故の際、ゴルフをやっていて危機管理の欠如で退陣を余儀なくされた。
その後に首相になった小泉純一郎は同じ派閥のボスである森の助言は一切聞かなかった。その代表が2005年夏、当時の小泉首相郵政民営化法案が参議院で否決された場合は「衆議院を解散する」と公言していた小泉を説得にいったが失敗。そのとき森は官邸から干からびたチーズと缶ビールを持って出てきて「殺されてもいい」という小泉の言葉を記者団に紹介した。そして、小泉は解散し、郵政選挙に突入し、大勝利を収める。そうすると、森はこの一件は小泉とあらかじめ仕組んだ「演技」であったと言い訳をし、自分の説得工作の失敗を認めようとしない。そのあたりが「ノミの心臓とサメの脳みそをもつ」政治家といわれる所以でもあろう。
小泉に袖にされ、安部に裏切られ、福田に無視され、挙げ句の果てに盟友の中川秀直にも見捨てられたそんな森が最後の夢をかけたのが現麻生太郎首相だった。

6月22日、森は神戸市での講演で次のように語った。
「麻生さんは全く縁のない人を幹事長にしているから、とんでもないことがいっぱい起きる。細田さんはまじめだが、選挙を率いるタイプではない」
この発言は党役員を模索していた麻生首相はゴーサインだと受け止め、一気に党人事断行へ舵を取る。
24日夜、安倍元首相は密かに首相官邸を訪れ、党役員人事と大幅な内閣改造麻生首相に強く進言することになる。
そして麻生首相は7月1日内閣改造、党役員人事、2日解散そしてそのまま都議選になだれ込むという日程を描いた。
ところが森が豹変した。神戸の講演から約一週間後の30日夜、都内の中華料理店で森と麻生が会食をした。そこで森は麻生の人事構想に強い口調で反対する。
細田幹事長らは『政局より景気』だと一生懸命やってきた。選挙もこのメンバーで訴えるべきだ」そして最後は「細田君は誰が選んだんだ?君でしょ。君が選んだんでしょ」とたたみ込み、麻生もうなずくしかなかったという。これで森は麻生の人事権を押さえ込むと同時に解散権すら封じ込めてしまった。その結果、翌日7月1日麻生が断行した人事は兼務になっていた2閣僚ポストの補充のみで完全に骨抜きにされた。
内閣総理大臣の権力の源泉は人事にある。党人事や閣僚ポストのみならず、すげての衆議院議員を一瞬にしてクビにできるその権限は最強である。ところが麻生首相はその最終兵器すら放棄せざるをえなかった。
2年前の夏、当時の安倍首相のもとに麻生幹事長が訪れ、麻生の間違ったアドバイスを聞いた安倍政権は崩壊へとひた走った。こうした権限外の忠告は、決まって政権運営にキズを残す。
今やすべては森の行動にかかっている。